The formation of the Ocean〜海のできかた〜

Ikumi Togawa WORK in PROGRESS  継続する創作の場所

個展「海のできかた 〜the formation of the ocean〜」を終えました。

 

このblogを読んで下さる皆様

8月22日〜24日に開催致しました「海のできかた 〜the formation of the ocean〜」@Brick-oneが、無事に終了致しました。

 

 今回は、4月のワークインプログレス「a black space〜黒い絵〜」から想起したテーマを元に、絵本・ダンス作品とそれに伴うオブジェクトの制作を行いました。

個展という形での発表は初であり、イメージを目に見える状態にするということと、表現するということとの差を痛感しました。目に見えるものは全て、既知のものでした。しかし、ダンスし、音響・照明とセッションする中でようやく見えた、新鮮で、自分にとって重要な、譲れない感覚がありました。言葉にするのは難しいのですが、それこそを、掘り下げ、確かめたいです。今後も、この「海のできかた」は、継続し、作品化します。そして、作品を介して、そこにいる人と、まだ知らない海の世界を見に行きたいと思います。

最後になりましたが、開催にあたり、多くの力を頂き、助けていただいたことに、本当に感謝しています。

 

これから、このブログには、展示・ワークショップ・ダンスの様子を、テキストを添えながら載せてまいります。改めて作品を眺めてみようと思います。

2014.8.27

 

 

8/23土 海のできかたWORK SHOP 「海にダーイブ!〜紙の海で泳ごう〜」

ワークショップ参加者大募集です。

小さなお子様から、大人の方まで、美術・ダンスの経験不問。

紙と身体を使ったワークショップです。

ぜひぜひ、ご参加ください!!お待ちしています。

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観る者の言葉 4/28

不自由さを乗り越えた先に

 ワークインプログレ渡川いくみ「a black space 黒い絵」レビュー(四日目十九時半〜回)

                                 取材・文 原千夏

 

ビニールの巨大なカーテンで仕切られている空間を、人が行き交う。音響ブースはむき出しになり、マイクスタンドがからまっている。床には、赤い板、緑の芝生マット、ガラスの壷、インク瓶、木の枝、髪の毛、原稿用紙などありとあらゆるものが散乱し、積み重なっている。ビニールの反射で薄明るい空間に、照明が、ぼんやりと演者たちの姿を浮かび上がらせている。

 

「わたしはわたしを超えられるのか?」と繰り返す田辺に、渡川は「そういう怖い声やめてくれますか」、「そういう個人的なことはやめてくれますか」と怒った声で返答する。前半は、田辺の言葉や正村のパフォーマンスが強く、ストーリーの中心となるべき渡川の存在が薄い。渡川が自由にならない空間をふがいなく感じていることは、観客にも伝わる。場の中心になってしまうほどに、大きく超然とした田辺の声。舞台の雰囲気を徹底的に崩しにかかる正村。渡川に遠慮が見えたのに対し、田辺・正村は何かがふっきれたように堂々と動く。

しかし前半から一転、渡川は、ソロダンスのシーンの中で不自由さから解放された気持ちのよい動きを見せる。押さえ込んでいたエネルギーを存分にほとばしらせて踊る姿は、彼女が場の空気を一瞬にして変えてしまうほどの実力と存在感を持ったダンサーだということを示す。

 

音響は、舞台の中で生まれた音を反復させるなど実験的で、ノイズ音を操作する装置は観客の手にも渡る。渡川と正村によってめちゃくちゃにされ、コードを引き抜かれたこの装置は、ジジジ、ピピピ・・・と壊れたおもちゃのような音を発し、しまいにはたたき壊されてしまう。即興とはいえ、緊張感のあるシーンだ。

観客は、三人の様子を、カーテンによって仕切られたそれぞれの空間の中から見る。カーテンが捲り上げられ、舞台全体が見渡せるようになることもあるが、すぐにカーテンは垂れ下がってしまう。邪魔そうでもあるが、カーテンにひっかかった木の枝の下を渡川がくぐる時などは空間に複雑さが生まれ、演出として非常に効果的に見える。また、様々な場所に客席がしつらえてあることは面白いが、ダンサーの様子があまり見えない場所に座ってしまった人にとってはフラストレーションともなり得るので、入念な設定が必要だろう。

 

終盤、巨大な紙のロールを運び入れるシーンは印象的だが、さらにより良い見せ方ができるだろう。不自由さを受け入れ、空間を濃密にかき混ぜ、この三日間で整えたものをすべて壊しきったことによる新たな発見は、八月の個展で結実するはずだ。

(2014.4.28)

 

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(撮影 佐藤さあや)

観る者の言葉 4/26

答えの海 感覚の川

 ワークインプログレ渡川いくみ「a black space 黒い絵」レビュー(二日目十八時〜回)

                                 取材・文 原千夏

 

床に麻袋が転がっている。人が入っているらしく、時折ごそごそと動く。「よっ!」、元気な挨拶。ゴーグルとスクール水着を身につけ、白いタオルをマントのようにまとった渡川が、軽やかに登場する。「わたし、泳ぎたいんです」と言いながら、座っている人々の間をぬうように、舞台をあちこち移動する。そして観客に、あなたはどこから来たのか、なに人なのかと問いかける。また渡川に導かれて踊り出す者、ガムテープをぺたっと貼られてしまう者もいる。ぎくしゃくとしたやりとりを通して、不可思議な空間をその場にいる全員が共有する。

 

「なにか書いています。近寄ってみてください」という言葉に誘われるように、観客は田辺の元へ集まる。すると田辺は、渡川に名札をつけてしまった。名前がつき自由に踊ることができなくなった渡川の代わりに、麻袋の中にいた正村はゆっくりと解放され、激しく動き始める。田辺がホースを吹くと、内臓に血液を送り出すような音が出る。シュコー、シュコーという空気入れの音。ちゃぷん、ちゃぷんという効果音。昨日まで地中だった場所は、今日は誰かの体内のようだ。

 

渡川は一人、光沢のあるゆったりとした衣装を着て、舞台後方の小さな窓へと向かう。青く静かな世界の中にゆっくりと吸い込まれる。ついに外へ出てしまった渡川が、窓の向こう側へと歩いて行くシーンは非常に印象深い。しばらくしてこちら側へと帰って来た渡川は、たくさんの花を抱えている。大野一雄さながら、永遠に若く、震えるようにやわらかな存在に見える。

 

渡川、田辺、正村の三人は、持ち上げたり引きずったりしながらむきだしの木を運ぶ。ライトを持った正村は二人の足元を照らすが、田辺は前が見えずに怯え、それを支えようとする渡川は揺れ動き、それぞれがそれぞれの役目をうまく果たせない。木の枝は少女二人によって痛々しく踏みつけられ、若芽をはじけさせる。彼らは、ぎこちなく、それでも運び続ける。

 

制作をしているとき、わたしたちはどこへ向かっているのだろう。ひたすらに思考し、自分への問いかけの中にいつのまにか溺れてしまっている。それは、水か体液か、土か。今日の公演で、観客はワークインプログレスの持つ無限大の可能性を目にしたことだろう。対話、役名のない人間同士の交流、散らばる物、人々。観客があの場で感じた、演者ととても近いような感覚は一体何だったのだろうか。残りあと二日、いかにまとめてくるか興味深い。

(2014.4.26.Sat)

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撮影:土居千明